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3. HRTは記憶,認知機能に無効か? 一過去の研究報告の分析とWHIの問題点−
京都府立医科大学大学院女性生涯医科学 本庄 英雄
2003年5月28日発行のJAMA−Express 289;2651−2662,Estrogen Plus Progestin and the Incidence of Dementia and Mild Cognitive Impairment in Postmenopausal Women及び同2663−2672,Effect of Estrogen Plus Progestin on Global Cognitive Function in Postmenopausal Womenでは昨年7月9日に報道されたWHI報告(Women's Health Initiative Randomized ControI Trial)の痴呆あるいは認知機能に関してThe Women's Health Initiative Memory Study(WHIMS)としてサブ解析を報告した。これらはこれまでの多くの報告と正反対にホルモン補充療法(HRT)が痴呆の予防とならない事,むしろ痴呆が増えると報告した。
即ちWHI報告の参加者の内,先の報告では2229人は毎日0.625mgの結合型エストロゲン(CEE,プレマリン(R))と酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)2.5mgの合剤(Prempro,Wyeth Ayerst)を1コずつ連日服用し,2303人にプラセボが投与された。2002年7月8日,臨床治験が中止された。このサブ解析では平均4.05年の経過が観察されている。HRT群で40人(66%)がprobable dementia(ほぼ痴呆)と診断され,プラセボ群で21人(34%)がprobable dementiaと診断され,危険率(hazard ratio)が2.05(95%信頼区間が1.21〜3.48)と分析されている。そのうち両群共にアルツハイマー病(AD)が多いとしている。次の報告のサブ解析では65才以上の女性を対象にしHRT群で認知機能の改善は見られなかったとしている。
現在WHIではエストロゲン単独連続投与治験は続行中であり,その結果が待たれる所ではある。しかし中枢神経系,特に海馬等への刺激効果は周期投与,即ち休薬期間を入れた方がより良いと考えられる。WHIMSでは黄体ホルモンが連日使用されている。成熟女性の月経サイクルでは半周期黄体ホルモンが存在していない。黄体ホルモン剤はうつ状態を招き,中枢神経機能特に記憶機能を抑制する。最近もBaulieu教授は動物実験でpregnenoloneは記憶力を高めるがprogesteroneは逆に記憶力を抑制する事を発表している。
黄体ホルモン剤併用を必要としない新規エストロゲン様製剤J861,SERM等の早期の臨床応用が期待される。エストロゲン単独(休薬を含む)では,エストロゲンの経口,経皮による全身投与と,子宮内膜局所への効果が期待される経膜黄体ホルモン剤の併用も一方法と考えられる。
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