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| 4.閉経女性の健康管理においてHRTの役割は変わったのか?−WHIのQOLに無効との結果をどうとらえるか− |
| 九州大学大学院医学研究院生殖病態生理学助教授 野崎 雅裕 |
中高年女性のQOLを著しく低下させる更年期障害に対して,従来よりホルモン補充療法(HRT)が行われてきた。エストロゲン欠乏による障害としては,血管運動神経障害をはじめ,泌尿生殖器萎縮,精神神経障害など多岐にわたる症状がある。エストロゲンを補うHRTは,このようなエストロゲン欠乏による諸症状に対し非常に効果的であり,更年期障害の治療法として普及している。さらに,エストロゲンが有する骨や心血管系などに対する作用が研究されるに及んでHRTの適応は広がり,欧米では,単に更年期障害の治療よりむしろ虚血性心疾患の予防的治療法としてのHRTに期待がかけられた事実があるが,WHIの中間報告以降,HRTをめぐる環境は変化している。一方において,HRTが本来目指している更年期障害の改善および他の治療法では充分に効果を得ることができない症状に対するHRTの有用性は確立しており,FDAもエストロゲン欠乏による障害の治療法としてのHRTをあらためて認めている。
HRTのベネフィットとしては,hot flush,発汗,抑うつ状態などの更年期障害症状の改善,性交痛などの性機能障害の改善,尿失禁などの泌尿器症状の改善,高回転型骨代謝による骨塩量減少の改善,高脂血症の改善,記憶・認知能力の改善やアルツハイマー病の抑制,大腸癌の減少,皮膚コラーゲン減少の抑制などが挙げられる。また,リスクとしては,不正性器出血や子宮体痛など子宮内膜への刺激,乳癌への変化を含む乳腺組織への刺激,深部静脈血栓症などが挙げられ,HERSやWHI研究においてHRTが心血管系疾患の発症リスクを増加させたとする報告も今後の検証が必要である。
HRTにおいて重要なことは,そのリスクとベネフィットを明確にしたインフォームド・コンセントを得て治療を行うことであり,閉経女性のQOLを改善するに最も効果のあるHRTを行うに際しては,投与方法・投与経路・投与量などを個別化して治療を行うことである。 |
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